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海洋プラスチックはどこに流れ漂うか。

公開日 08/October/2026 · Nature

海洋プラスチックはどこに流れ漂うか。

SORAH Editorial 著

海岸で見失ったプラスチックにも、移動の続きがある。波に揺られる小片は、私たちが暮らす街の区切りも、海図に引いた国境も知らない。日本の東方沖から太平洋へ。海流に運ばれる時間をたどると、遠い海の汚染が、陸で使い、手放すものの行方として見えてくる。

2026年9月27〜30日、プラスチック汚染に関する国際交渉の次会合に向け、代表団長らの非公式会合が開かれた。議論の対象は、ごみになった後の処理だけでなく、プラスチックの生産、設計、利用を含むライフサイクル全体に及ぶ。海へ出た後を知ることと、海へ出る前を考えることは、同じ問題の両側にある。 [1] [2]

日本の東方沖、1〜2月放流を想定した移動確率。Plastic Adriftの統計モデル。

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日本の東方沖、1〜2月放流を想定した移動確率。Plastic Adriftの統計モデル。

太平洋には、ものが集まりやすい流れがある

海の水は、その場にとどまっていない。海面の風や海流、渦、季節の条件は、漂うものの行き先を変える。広い海に出れば均等に薄まると考えたくなるが、実際には集まりやすい海域もある。NOAAは、こうした集積域を「ガベージパッチ」と呼んでいる。海流と風が動けば、その位置や広がりも変わる。 [3]

「太平洋ごみベルト」という言葉から、歩いて渡れるごみの島を思い浮かべるかもしれない。しかし、NOAAが説明するのは、海面から水中へ散らばった、細かなプラスチックを多く含む海域だ。船上から見て何もないように見えることと、水の中に何もないことは同じではない。遠くからの景色だけでは気づきにくい汚染がある。 [4]

今回の映像は、観測ブイの移動をもとにしたPlastic Adriftの統計モデルで、日本の東方沖から漂うものの行き先を考える。1〜2月に放流したという条件から、10年後までの移動確率をたどる。明るい場所は、その条件で到達する確率が高い場所を示す。広がる分布は、一つの出発点が長い時間をかけて複数の海域へ関わっていく姿でもある。 [5]

海の研究は、流れに身を任せることからも始まる

海流を知るには、海の上を移動するものを測る方法がある。NOAAの全球漂流ブイ計画では、位置と海面の状態を報告するブイが世界の海に展開されている。船で一度通り過ぎる観測とは違い、流れに沿って移動する記録が続く。海を固定した座標から見る方法に、動くものに寄り添う方法が加わる。 [6]

Plastic Adriftを支える研究は、そうしたブイの記録から、海域の間を移る確率を計算した。一つの小片を何年も連続撮影した映像ではなく、多くの移動の記録から、起こりうる行き先を見渡すための方法だ。個別の旅が見えなくなった後にも、海がものを運ぶ仕組みを調べることはできる。 [5]

出発点と到着先を直線で結ぶ地図なら、途中の時間は抜け落ちてしまう。太平洋を時間とともに眺めると、移動は一度の輸送ではなく、広がり、滞在し、再び動く過程として見えてくる。遠い海岸同士の距離だけでなく、その間に流れ続ける時間も、私たちの暮らしをつないでいる。

モントレー湾で、見えない広がりを試料にする

米国カリフォルニア州のモントレー湾国立海洋保護区では、海面を曳くマンタトロールという網でマイクロプラスチックを採集している。浮きのついた開口部で海面近くの水を受け、網の末端へ内容物を集める。遠くから見渡す海を、手元で調べられる試料へ変える仕事だ。 [7]

米国モントレー湾国立海洋保護区で海面を曳くマンタトロール。Chad King / NOAA、Public Domain。撮影日不明。 出典

米国モントレー湾国立海洋保護区で海面を曳くマンタトロール。Chad King / NOAA、Public Domain。撮影日不明。 出典

一般に5mm未満のプラスチック片はマイクロプラスチックと呼ばれる。大きな製品が小片になる場合もあれば、小さな粒として環境に出る場合もある。NOAAの海洋マイクロプラスチックのデータベースは、各地の観測を集めている。海の広さに対して、一回の採集で捉えられる範囲は小さい。場所と時期を記録した試料の積み重ねが、その隔たりを少しずつ埋めていく。 [8]

網の末端から試料を回収する研究者。Chad King / NOAA、Public Domain。撮影日不明。 出典

網の末端から試料を回収する研究者。Chad King / NOAA、Public Domain。撮影日不明。 出典

回収した網の中を確かめる人の手を見ていると、地図の濃淡が、最初から存在する答えではないことがわかる。海へ出る人、試料を分ける人、記録を比較する人がいる。漂うものを可視化するためには、漂っているという事実そのものを確かめる営みが必要になる。

海面の下にも、プラスチックの行方がある

モントレー湾で行われた別の研究は、深さ5〜1,000mの海水と、粒子を食べる動物を調べた。2019年に発表された論文は、海面近くだけでなく、その下の水中にもマイクロプラスチックが広く存在し、生物による輸送にも関わることを示している。平らな海面の地図に、深さというもう一つの次元が加わる。 [9]

表面を漂う分布が薄くなったとき、その場所から問題がなくなったと即断はできない。水の中で起きることと、岸へ届くこと、生き物に取り込まれることは、別の観測で確かめていく必要がある。海面の広がりを見る映像は、海全体を一度に説明する絵ではなく、その奥へ関心を進めるための入口になる。

小さな粒と、使われなくなった網

プラスチックの行方は、海水の移動だけで完結しない。NOAAは、プランクトン、貝、魚、海鳥、海棲哺乳類などによるプラスチックの摂取を報告している。餌とともに取り込む場合や、すでにプラスチックを飲み込んだ獲物を食べる場合もある。漂う小片は、動物が食べ物を探す時間とも交差する。 [10]

大きなものにも、別の持続がある。失われたり放棄されたりした漁具が、使い手のいないまま動物を捕らえる「ゴーストフィッシング」だ。合成繊維の網やロープは、海の中で残り、絡みつきや生息場所への損傷を起こしうる。食料を得るためにつくられた道具が、管理する人から離れた後にも働き続けてしまう。 [11]

それは生き物だけでなく、海で働く人にも関わる。失われた漁具は漁獲機会を減らし、船の航行を妨げることがある。海岸のごみは、その場所を訪れる人や管理する地域の負担にもなる。海洋プラスチックは、遠洋の環境問題という一つの区分に収まらず、漁業、観光、海岸の日常へとつながっている。 [12]

海で回収することと、陸で流出を減らすこと

海岸や海上でごみを回収すれば、そこにあるごみを取り除ける。一方で、新しいものが流れ込み続ければ、回収の仕事も終わらない。海流の地図を出発点へ逆にたどると、どこで使われ、どこで管理の外へ出たのかという、陸側の問いに戻ってくる。

UNEPの報告『Turning off the Tap』は、不要な利用を減らし、再使用、再生利用、材料や製品の設計の見直しを組み合わせる道筋を示す。使い終えたものを集める仕組みに加え、再び使いやすい形でつくることや、販売される地域で実際に再生利用できることが重要になる。最後に捨てる人だけの責任にすると、製品をつくり、流通させる段階で変えられることが見えなくなる。 [13]

日本の沖から始まる光の分布は、太平洋を横切りながら形を変えていく。その先で何が起こるかを考えることは、手元で何を選び、どのように使い続け、手放すかを考えることでもある。海岸線は、暮らしの終わりの線ではない。そこから先にも、私たちが送り出したものの時間は続いている。

データと表現

公式配布CSVを4地点・各61時点取得。最初の行の座標を出発点として採用。緯経度は整数座標、表示はその地点の点記号です。

元CSVは確率0.00025未満の地点を省略します。省略分を100%に再配分せず、表示地点の合計を併記。低い確率の違いを読みやすくするため、色の明るさに0.4乗の非線形尺度を使用。確率値自体は変更せず、全出発点・全時点で0〜1%の同じ色尺度、1%以上は最大色に固定します。

1–2月の放出季節を前提とするモデル時間です。現行配布モデルの元観測期間・最終更新年は未確認。特定の暦年や2026年の予測とは呼びません。

Plastic Adrift / Erik van Sebilleほか、CC BY 3.0。座標変換と描画をSORAHが実施。沈降・漂着・分解を含む実際のごみ量の推計としては扱いません。Data Scape探索試作として再利用できるデータと表示定義を同梱。

北大西洋の出発点を追加取得し、61時点・2か月間隔・開始地点・確率和を検証。放流地点別の確率を合算・再正規化せず、平面の表示範囲外にも分布が続く場合があります。動画はモデルの時間ステップを順に表示し、未観測の個体軌跡は生成しません。

出典

  1. UNEP · Informal Heads of Delegation meeting, 27–30 September 2026
  2. UNEP · Intergovernmental Negotiating Committee on Plastic Pollution
  3. NOAA · What is marine debris?
  4. NOAA · What is the Great Pacific Garbage Patch?
  5. van Sebille et al. · Origin, dynamics and evolution of ocean garbage patches (2012)
  6. NOAA AOML · Global Drifter Program
  7. NOAA · Microplastics, Monterey Bay National Marine Sanctuary
  8. NOAA NCEI · Marine Microplastics
  9. Choy et al. · Vertical distribution and biological transport of marine microplastics (2019)
  10. NOAA Marine Debris Program · Ingestion
  11. NOAA · Marine Debris: Derelict Fishing Gear
  12. NOAA · What are the impacts of marine debris?
  13. UNEP · Turning off the Tap (2023)

執筆者

SORAH Editorial

2026年10月8日

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