
穀物や果物、家畜の飼料は、どこからどこへ届くのか。198の国・地域の輸出入を、取引の重量と方向からたどる。

穀物や果物、家畜の飼料は、どこからどこへ届くのか。198の国・地域の輸出入を、取引の重量と方向からたどる。
一つの食卓に、いくつの国がある
パンの小麦、料理に使う油、家畜が食べる飼料。食卓に並ぶものは、完成品の姿になる前にも国境を越える。商品ラベルにある国から原料を支える土地へたどると、農産物の貿易を通じて食事の背後にあるもう一つの地理が見えてくる。今回扱うのは、FAOSTATの2024年の詳細貿易行列だ。国と相手国、品目、数量が結び付いた記録から、重量を比較できる518品目を集計した。穀物や果物、飼料、非食用の農産物を含む、幅広い農業の取引を捉えている。 FAO・Detailed trade matrix
198の国・地域、18,520の方向
集計には198の輸出国・地域と198の輸入国・地域、18,520の方向を持つ国ペアがある。収録した貿易重量は約18.6億トン。線の琥珀色の側が輸出、青緑色の側が輸入を表す。同じ二か国の間でも、どちらへ送るかが違えば別の流れである。線が太いほど、年間に記録された重量は大きい。帯を流れる細かな粒が輸出から輸入への方向を示し、1年分の取引を同じ地図で見渡せる。量と方向を合わせて見ると、各国の受け取り方と送り出し方の違いが浮かび上がる。 2024年・国ペア集計
多数の細い関係も残すことで、主要な取引と、その周囲へ伸びる広がりが同時に現れる。国を選んで見ると、世界の網目を一つの国の受け取り方と送り出し方へ読み替えられる。
各国が持つ、輸出と輸入の二つの役割
この集計で米国の輸出は約2.29億トン、輸入は約0.99億トン。中国は輸入約2.32億トンと輸出約0.49億トンを併せ持つ。ブラジルの輸出は約2.33億トン。日本は輸入約5,192万トン、輸出約186万トンとなる。採用した518品目の報告を共通の重量尺度で比べると、各国が貿易の中で担う役割が見えてくる。 SORAH集計各国に置いた二つの半円は、この二重の役割を同じ尺度で見せる。輸出が大きい国にも輸入があり、輸入が大きい国にも国外へ送り出す農産物がある。「生産する側」と「受け取る側」という二色の世界より、実際の関係は複雑だ。

1トンを追うことの意味
重量で見る利点は、国境を越える物質の規模に注目できることだ。1トンの小麦、1トンの果物、1トンの油には、それぞれ異なる価格、栄養、水分量がある。重量の地図を出発点に品目の内訳へ進むと、大きな流れがどのような食事や産業を支えるのかを考えられる。加工や再輸出を経て、同じ原料が複数回国境を越えることがある。約18.6億トンという数字は、そうした国際取引を足した総重量だ。輸出国の先に原料の産地をたどると、生産、加工、流通の役割が重なって見えてくる。
写真に写る西オーストラリアのクウィナナ穀物ターミナルは、陸の生産物と海上輸送をつなぐ場所の一例だ。地球儀の線の端には、貯蔵や積み出しを担う具体的な施設と、そこで働く人々がいる。

線の下にある土地を読む
農地、森林、川を背景に添えると、取引を支える土地へも目が向く。作物が育つには水や土、生育に適した条件が必要になる。貿易量の大きな国の自然を調べることは、遠くの生産を支える条件を知る入口になる。森林と食料生産の関係は、雨を通じても研究されている。Praninditaらの2025年の研究は、森林からの水蒸気が降水と作物供給を支える関係をモデルで解析した。農産物の取引に、その生産を支える水の循環という視点を重ねる手がかりになる。 Pranindita et al. (2025)
貿易の線を見るとき、その下にある土地も一緒に思い浮かべる。何をどこから受け取り、どこへ送り出すのか。そして、その作物はどんな水と土に支えられるのか。食卓と世界の関係は、生産とその国や地域の自然を通して読み直すことができる。
データと表現
貿易:FAOSTAT Detailed trade matrix (TM)、2024年、518品目のトン単位データ。食品・飼料・非食用農産物を含みます。頭数等の単位、地域・世界の集計行、同一国向け行は集計対象外。公式カタログ改訂2025年12月22日、アーカイブ更新記録12月23日、取得2026年10月12日。CC BY 4.0。国ペア・品目ごとに、ゼロ報告を含む輸出数量(5910)を優先し、欠測時だけ相手国の輸入数量(5610)を1回採用。輸入報告による補完は重量の9.3%、ロシアの輸出は全量が補完値です。欠測は欠測として保持。総量の範囲は採用した品目・報告に対応します。
198輸出国・地域、198輸入国・地域、18,520方向。年間取引重量の総和には、再輸出や加工を経た複数回の国境通過が含まれます。生産地の追跡、栄養・カロリー、水フットプリントの評価には、それぞれの追加データが必要です。
線幅は重量の0.7乗+最小幅、半円の半径は輸出入共通の平方根尺度+最小半径。左の琥珀は輸出、右の青緑は輸入。国の端点はNatural Earthの代表位置です。主要800経路の粒の帯は輸出→輸入の方向を示す模式表現で、全体が2024年の年間集計に対応します。
森林・農地:ForAgriの0.5°優占区分。MIRCA約2000年・MODIS等の複数年の入力に基づく固定背景。河川:HydroRIVERSのStrahler次数3以上の本流・支流。背景は土地被覆と河川位置を示します。
森林と雨の研究:Pranindita et al. (2025)は、森林由来の水蒸気、降水、作物供給の関係を扱うモデル研究として紹介しています。主図の輸出入線はFAOSTATの国際取引記録に基づきます。
西オーストラリアのクウィナナ穀物ターミナル。2014年1月19日撮影。 Stephen Edmonds · CC BY-SA 3.0 · Source. 比例縮小・JPEG圧縮のみ。
出典
執筆者
SORAH Editorial
2026年10月12日



