
森の広さから、その土地に蓄えられた木質の重量へ。2024年の全球分布を読む。
森を上から見ると、まず緑の広がりが目に入る。その下では、細い幹が太り、枝が伸び、木々が場所を取り合っている。森林バイオマスの地図は、その積み重なりを乾燥重量として見るためのもう1枚の地図だ。
1ヘクタールに、どれほど蓄えられているか
主図の単位はMg/ha。1 Mgは1トンに等しい。地上に生きる木の幹や枝などの木質部を、乾燥させたときの重さとして単位面積あたりで推定する。ESA CCI Biomass v7.0は2026年5月21日に公表され、2024年までの推定を収録した。今回の映像は2024年を固定し、世界の分布を見渡す。Santoro & Cartus, 2026今回使う公式集約データは0.5°格子、赤道付近で約50km級の広がりを持つ。格子全体の面積を分母にするため、森林が占める範囲と、その中の木々の蓄積の両方が、見えてくる密度に関わる。地図の明るい場所から、どんな森林や土地利用がその値をつくっているかをたどれる。
同じ1ヘクタールでも、森の重さは違う
100m四方が1ヘクタール。その中に細い若木が多くあるのか、太い木が枝を広げているのか、木の間に草地があるのか。上から見た緑の面積が似ていても、蓄えられた植物の乾燥重量は変わる。木の体積から重量へ進むには、樹種によって異なる木材の密度なども手がかりになる。米国森林局の森林調査では、体積、バイオマス、炭素を一貫して推定するモデルが整備されている。US Forest Service・樹木の体積とバイオマスここで使う地図を読むときは、格子の中の森林面積にも注意したい。説明のために、1ヘクタールあたり200トンの森林が、ある格子の半分だけを占める場合を考える。他の半分の地上部バイオマスを0とすれば、格子全体の平均は100トンになる。これは単純化した計算例だが、土地全体を分母にする意味が見えてくる。森林内の蓄積と、その森林がどれほどの範囲を占めるかが一緒に表れる。
幹を測る人と、地球を見る衛星
現地では木の寸法を測り、森林の状態を記録する。広域の衛星観測と、こうした地上の知識を結びつけることが、森林の重量を推定する土台になる。写真に写るのは、米国アリゾナ州の国有林で行われた木の測定と標識付けだ。
米国アリゾナ州、アパッチ・シットグリーブス国有林で木を測定する職員。2018年12月6日。 Lance Cheung / USDA · Public domain · US federal work · Source
CCIの地図は、ALOS・ALOS-2、Envisat、Sentinel-1などの観測を組み合わせてつくられる。森林の構造に関わる情報をレーダーから得て、木質の蓄積を推定する。データには推定の不確かさも添えられ、場所によってどれほど確かに読めるかを確かめられる。ESA CCI Biomass
光の往復時間から森林の高さを調べる観測もある。国際宇宙ステーションに搭載されたNASAのGEDIは、レーザー光を使って樹冠から地表までの立体構造を測る。森を平面の緑として見る観測に、高さの情報が加わることで、枝葉や幹が空間の中にどう分布しているかを調べられる。GEDI・ミッション概要
地上の測定、レーダー、レーザー。それぞれの観測が得意とする情報を組み合わせて、推定の信頼性を確かめていく。写真の中で木を測る人と、地球を周回する機器は、異なる距離から同じ森林を調べている。完成した地図の1つの値の背後には、計測を繰り返し、場所の違いを確かめる仕事がある。
蓄えている量と、毎年増える量
木は成長に伴って、大気から取り込んだ炭素の一部を体内へ蓄える。森林のバイオマスは、その蓄積を考える基礎となる。ある時点の量を「ストック」、時間とともに出入りする量を「フロー」として捉えると、今ある森林と、その後の変化の役割を整理しやすい。ESAのBiomassミッションは、森林の蓄積と変化を調べ、炭素循環の理解を進めることを目指している。ESA・森林と気候例えば同じバイオマスの値でも、その場所が成長の途中なのか、伐採や火災を経験した直後なのかで、次に確かめたいことは変わる。現在の地図を起点に、過去の画像や管理記録をたどり、年次の変化を不確かさとともに見る。地図上の明るい場所を守る意味も、蓄積が少ない場所で回復を促す意味も、その時間の流れに置くことで具体的になる。
森を見る技術の、新しい世代
2025年4月29日には、ESAの新しい衛星Biomassが打ち上げられた。長波長のPバンドレーダーで森林の構造を捉え、炭素循環の理解を進めるミッションだ。今回の2024年の地図は、これまでの複数衛星によるCCIの成果。そこから先を、次の世代の観測が引き継いでいく。ESA Biomass mission2025年6月に公表された初期画像には、ボリビア、ブラジル、インドネシアなどの森林が映し出された。長い波長のレーダーで林冠の下の構造を探る試みは、葉の表面の見え方から、森の内部へ観測を進めるものだ。ESA・2025年6月23日の初期画像発表
こうした観測が増えると、現地へ入って調べる範囲と、宇宙から見渡す範囲を結びつけやすくなる。地図の更新を追う研究者、森林を管理する人、地域の資源として木を使う人。それぞれが違う時間幅で森林を見る。その間で共有できる量をつくることも、バイオマス観測の役割だ。
緑が戻る、その先を読む
森林について考えるとき、面積に重量の視点が加わると、そこにどれほどの木質が蓄えられているかを問える。苗木を植えること、育った木を守ること、木材を使いながら次の森を育てること。その時間の長さを考えるために、まず今ある森の蓄積を知る。地図の1つの格子は、その土地の森へ関心を向ける入口になる。データと表現
ESA CCI Biomass v7.0(Santoro & Cartus, 2026)、DOI:10.5285/6429d1aafe1e43b9b414e4a5a7f8b903。ESA個別利用条件に基づき出典を明示。公式50km級(0.5°)集約版。2005–2012・2015–2024年の18年を探索画面に保持。映像は2024年固定。51,190格子、全年度0の格子は描画省略、年別0は有効値。
木質部の地上乾燥重量(Mg/ha)、格子全体面積あたり。根・切り株を除く。炭素量への換算は行わない。表示の短い線は重量を強調する図形。
不確実性は供給元agb_sd(標準偏差、Mg/ha)。年次変化の評価には変化製品の不確実性・品質フラグの確認が必要。海岸・国境・緯度経度線は共通投影。
出典
執筆者
SORAH Editorial
2026年10月16日



