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今年のエルニーニョは、史上最強になるのか

公開日 23/September/2026 · Climate

今年のエルニーニョは、 史上最強になるのか

SORAH Editorial 著

太平洋の赤道に沿って、赤い帯が伸びている。2026年1月と9月の水温図を並べると、青く見えていた海域が、9月には赤く染まっている。海面の温度が変わると、なぜ雨の降る場所まで変わるのか。

太平洋の赤道に沿って、赤い帯が伸びている。2026年1月と9月の水温図を並べると、青く見えていた海域が、9月には赤く染まっている。地図の色は、海面の水温が平年からどれだけ離れているかを表している。

米国海洋大気庁(NOAA)は9月10日、2026年10〜12月に、1950年以降の過去の事例を上回る強さのエルニーニョになる確率を75%と発表した。これは相対海洋ニーニョ指数(RONI)の3か月平均に基づく予測だ。「史上最強」は、すでに観測で確定した記録ではない。海と大気はともにエルニーニョの強まりを示し、NOAAは年末に向けてさらに発達すると見込んでいる。[1]

海の温度が変わると、なぜ雨の降る場所まで変わるのか。まずは、同じ太平洋を3つの時点で見てみよう。

赤い帯は、何と比べて暖かいのか

日なたと日陰で温度が違うように、海にも季節や場所による温度差がある。今回の図が示すのは、それぞれの場所で、同じ時期の平年値と比べた水温の差だ。これを「海面水温偏差」という。赤は平年より高く、青は低い。図の基準には、NOAAのデータに含まれる1971〜2000年の気候平均を用いた。[2]

2026年1月15日、6月15日、9月20日の太平洋の海面水温偏差を同じ尺度で比較した図。

図1|同じ太平洋の3時点。Niño 3.4領域の各日の平均偏差は−0.66°C、+1.83°C、+3.09°C。9月20日は暫定解析。色・投影・基準期間を揃えた単日の比較で、月平均ではない。出典:NOAA OISST v2.1/集計・描画:SORAH。

図中の枠は、赤道を挟むNiño 3.4と呼ばれる海域だ。SORAHがこの範囲を集計すると、平均偏差は1月15日に−0.66°C、6月15日に+1.83°C、9月20日に+3.09°Cとなった。平年より低い状態から、高い状態へ。この3日を比べるだけでも、海の変化を具体的な場所と数値で確かめられる。

ただし、+3.09°Cは、その1日、その海域の平均値である。海全体が1月から3.09°C暖まったという意味ではない。また、NOAAが現象の診断に用いる相対海洋ニーニョ指数(RONI)は、熱帯全体の水温偏差も考慮した3か月平均で、計算方法も基準期間も異なる。この図の数値を、そのまま公式の強度区分に当てはめることはできない。[3]

風が海水を運び、海の温度が風に作用する

平常時の赤道付近では、貿易風と呼ばれる風が東から西へ吹き、海面近くの暖かい水をアジア側へ押している。一方、南米側では、深いところから比較的冷たい水が上がってくる。西に暖かい海、東に冷たい海という分布を、風と海水の動きが支えている。[4]

エルニーニョでは、この貿易風が弱まり、暖かい海水が中央部から東部へ広がる。すると海の東西の温度差が小さくなり、大気の循環にも変化が生じる。風と海水は互いに作用するため、一度暖水域が変わると、それが風の変化をさらに促す。発生のきっかけまで含めた仕組みには、研究が続いている部分もある。[5]

平常時とエルニーニョ時を比較する概念図。エルニーニョ時には貿易風が弱まり、暖水域と雨を伴う上昇気流の中心が東へ移る。

図2|風・暖水域・雨の位置関係。平常時とエルニーニョ時の典型的な違いを整理した概念図。観測データや2026年の予測図ではなく、幅・位置・矢印の長さは定量的な値を示さない。NOAA・気象庁の解説に基づきSORAH作成。[4–6]

暖かい熱帯の海の上では、湿った空気が上昇し、雲や雨が発達しやすい。西太平洋で上がった空気が上空を東へ進み、東側で下降する大きな循環を「ウォーカー循環」という。暖水域が東へ広がると、上昇気流と雨の中心も移る。海の温度分布の変化が、空気の動きを通じて降水の分布に現れる。[6]

海の変化は、陸の季節にも届く

大気の流れが変わると、影響は赤道付近からさらに遠くへ及ぶ。こうした離れた地域どうしの気候の関係は「テレコネクション」と呼ばれる。熱帯での変化が上空の風にも作用し、雨をもたらす低気圧の通り道などを変えていく。[7]

例えば北半球の冬には、エルニーニョに伴って太平洋のジェット気流が南へ寄り、米国南部で平年より雨が多くなる傾向がある。ただし、これは過去の事例などから得られた季節的な傾向だ。2026年のどの街に、いつ大雨が降るかを示すものではない。[3]

季節の雨の量や降り方は、農地の水分や貯水池への流入を左右する。雨がいつ戻るかを待つ場所もあれば、降りすぎへの備えが必要な場所もある。遠い海の変化を継続して調べることが、農業や水資源の見通しに役立つのはそのためだ。[8]

ひとつの温度差で、地域の未来は決まらない

エルニーニョの影響は、毎回同じ形では現れない。暖まる海域の位置や発達する時期に加え、別の海の状態や大気そのものの変動も天候に関わる。現象が強ければ、ある場所の雨量も同じ割合で増える、という関係にはならない。[3]

水温偏差の赤には、比較に用いた時代も含まれている。長期的な海の温暖化や、より長い周期の変動も基準からの差に影響するため、赤い部分すべてをエルニーニョだけの効果とみなすことはできない。何年を基準に、どの範囲を、どれほどの期間で比べた数字なのか。水温図を読むときには、色とともにその条件も確かめたい。[9]

3枚の地図の、その先へ

今回の地図は、衛星、船舶、ブイなどの観測を統合したNOAAの解析データから描いたものだ。広い海の記録を同じ尺度で並べることで、一つひとつの観測だけではつかみにくい分布が見えてくる。[2]

エルニーニョをたどるには、その水温図に、風や雨の観測を重ねていく必要がある。どこが暖まり、空気の動きがどう変わり、どの土地で雨が増減したのか。異なる記録を照らし合わせることで、海と陸の出来事をともに考えられる。

この先、太平洋の暖水域はどう変わり、どの地域の雨に変化が現れるのか。3枚の地図が示した後にも、海と大気の観測は続いている。

データと描画について

図版の海面水温偏差はNOAA OISST v2.1のanomを使用。基準期間は1971–2000年。Niño 3.4(5°S–5°N、170°W–120°W)の有効格子を緯度のcosで重み付けして平均した。元データは0.25°格子。2026年1月15日・6月15日・9月20日の単日比較で、9月20日は暫定値。表示色は−4〜+4°C、範囲外は端の色で表示。値は小数第2位に丸めた。3枚の間の経過や、世界の海の熱量を測った図ではない。データ・出典の確認日:2026年9月22日。

出典

  1. NOAA CPC — ENSO Diagnostic Discussion, 10 September 2026
  2. NOAA NCEI — Optimum Interpolation Sea Surface Temperature
  3. NOAA NWS — What is El Niño & La Niña? / ENSO Impacts, February 2026
  4. NOAA Ocean Service — What are El Niño and La Niña?
  5. 気象庁 — よくある質問:定義・メカニズムなど
  6. NOAA — The Walker Circulation: ENSO’s atmospheric buddy
  7. NOAA Climate.gov — How El Niño and La Niña affect the winter jet stream and U.S. climate
  8. NOAA Climate.gov — El Niño and La Niña: Frequently asked questions
  9. 気象庁 — よくある質問:用語・指数

執筆者

SORAH Editorial

2026年9月23日

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