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生物多様性は115年でどう変わったか。生きものの暮らす土地を読み直す。

公開日 16/October/2026 · Nature

生物多様性は115年でどう変わったか。生きものの暮らす土地を読み直す。

SORAH Editorial 著

1900年と2015年。土地の使われ方と気候を手がかりに、生物群集の健全度を全球で比較する。

Data Scapeでデータを探索する

いつも聞こえていた鳥の声が少なくなる。畑の縁にいた昆虫を見かけなくなる。生物多様性の変化は、最後の1匹が姿を消すより前から始まる。身近な種が、その土地でどれだけ暮らし続けられるか。その視点から115年の地球を見ると、国境とは異なる模様が現れる。

同じ土地を、同じ物差しで

主図は、BES-SIM研究で使われたGLOBIOの歴史推定だ。1900年と2015年の土地利用・気候条件をもとに、自然に近い状態に対する、もともと生息する種の個体数の保たれ方をMSAで表す。ここでは両年に値のある18,972格子を比較した。高い健全度はミント、低い健全度はコーラルへ。基準と尺度を固定すると、地域ごとに変化の大きさが違うことが見えてくる。BES-SIM GLOBIO

2024年にScienceで公表されたPereiraらの研究は、複数のモデルと指標を並べ、20世紀の土地利用変化による多様性の低下を検討した。指標によって捉える側面が変わるため、種の数、個体数の保たれ方、生態系の働きを組み合わせることが、変化の全体像へ近づく手がかりになる。Pereira et al., 2024

種の名前が残っていても、群集は変わる

ある林に、以前からいた鳥、昆虫、植物が今も見つかるとする。種の一覧をつくると同じ顔ぶれでも、それぞれの個体数が減っていれば、林の状態は変化している。MSAが目を向けるのは、この「もともといた種がどれほど保たれているか」だ。基準より増えた種は基準値で頭打ちとして扱い、一部の種の増加によって他の種の減少が相殺されるのを抑える。GLOBIO・MSAの定義

この見方には、時間を読むときの手がかりもある。1900年は比較の出発点であり、場所によってはすでに長い農耕や都市の歴史を持つ。2015年との色の差は、その間に変わった分を示す。両年とも低い場所では、さらに古い土地利用の歴史へ問いを広げられる。2015年の色と115年間の変化を併せて読むと、今の状態と、そこへ至った道筋を分けて考えられる。

森林が畑になるとき

森林から農地や牧草地への転換は、生きものの住まいの条件を組み替える。木陰、土の湿り、餌となる植物、移動できる距離。その土地にもともといた種にとって、同じ緯度・経度でも暮らしやすさが変わる。土地利用は食料や資源を生む営みでもある。地図の変化は、何を生産し、どの場所を残し、どう管理してきたかという選択と重なる。iDivの研究解説

生息地の面積とともに、その配置にも目を向けたい。まとまっていた森が小さな林へ分かれると、餌場や繁殖場所の間を移動する条件も変わる。IPBESは、生物多様性の変化をもたらす直接的な要因として、土地利用の変化、資源の利用、気候変動、汚染、外来種などを挙げる。現地の変化を調べるには、土地の色に、道路、管理の履歴、種ごとの観測記録を重ねていく必要がある。IPBES・変化をもたらす要因

1°の格子は、南北方向に約111kmの幅を持つ。そこには町、畑、二次林、保護された森が同居しうる。広域の地図で気になる場所を見つけ、より細かな記録へ降りていく。その往復によって、例えば「この地域ではどの土地利用が広がったのか」「残った生息地はつながっているか」という、現地で確かめられる問いに変えられる。

倒れた木にも、暮らしがある

ポーランドとベラルーシにまたがるビャウォヴィエジャの森には、長く残された低地林がある。立ち枯れた木や倒木は、菌類や木を利用する無脊椎動物の生息場所をつくる。森林の価値を考えるとき、そこに生きる種と、その種を支える環境の組み合わせが大切になる。UNESCO・ビャウォヴィエジャの森

ポーランド、ビャウォヴィエジャの森。2020年7月28日。

ポーランド、ビャウォヴィエジャの森。2020年7月28日。 Rakoon · CC0 1.0 · Source

全球の格子から、その中にある林、草地、水辺へ目を移す。モデルが示す大きな傾向と、現地で数えられた個体や管理の記録を重ねれば、保全のために確かめる場所や問いを、より具体的にできる。

食料をつくる土地にも、生きものの働きがある

保全を考える範囲は、保護区の外にも広がる。作物の花を訪れる昆虫、害虫を食べる生きもの、土の中で有機物の循環に関わる生物。農業の生産を支える働きの一部は、こうした群集によって担われる。生物多様性条約の目標10は、農業や林業などの生産の場で、生物多様性を活かした持続可能な管理を進めることを掲げている。生物多様性条約・目標10

その土地の生きものを残す方法は、何をつくり、どんな環境で営むかによって違う。地図を農地の分布と見比べるなら、生産を続ける場所でどんな管理ができるかも考えたい。作物の多様化や土壌の管理を、その地域の生産者の仕事や収入とともに捉える。自然の状態と暮らしの条件を両方確かめることが、続けられる方法を探す出発点になる。

2030年へ、面積と中身をともに確かめる

昆明・モントリオール生物多様性枠組には、2030年までに劣化した生態系の少なくとも30%を効果的な回復の取組の下に置く目標がある。回復の目的には、多様性や生態系の働きに加え、健全さとつながりを高めることが含まれる。生物多様性条約・目標2

この目標を身近な土地へ引き寄せると、回復をどう確かめるかという問いになる。植物が定着したか、そこで繁殖する動物が戻ったか、周囲の生息地へ移動できるか。全球の歴史推定は、こうした現地の取組に長い時間の背景を与える。何年も同じ場所を見続ける調査と組み合わせることで、残された環境と、手を入れるべき条件を具体的に探れる。

失われた量から、残せる条件へ

地図の色を、土地の将来へ読み替えてみる。生息地を保つ余地はどこにあるか。生産のために使う土地で、どんな環境を残せるか。115年の比較が開くのは、暮らしを支える土地を、生きものも暮らせる場所としてどう引き継ぐかという問いだ。

データと表現

BES-SIM GLOBIO、Schipper & Alkemade (2023)、DOI:10.25829/r7bt92、CC BY 4.0。LUCC系列の1900・2015年。研究モデルによる陸域の歴史推定。

MSAは自然に近い基準状態に対する在来種の相対個体数の平均(0–100%)。1°格子、南北約111km。比較可能な18,972格子を使用し、欠測を保持。

映像は左が1900年、右が2015年。同一投影・同一尺度で重ね、細い境界線で二分割する。両年の地理レイヤーへ同じカメラ移動を適用。海洋・淡水の独立した評価は対象外。

差分図は2015−1900、単位はパーセントポイント。背景地理はNatural Earth(public domain)。

出典

執筆者

SORAH Editorial

2026年10月16日

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Data Source:Ed Hawkins, National Centre for Atmospheric Science, University of Reading

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