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風力発電、風が強い場所に風車は建っているか。

公開日 10/October/2026 · Energy

風力発電、 風が強い場所に風車は建っているか。

SORAH Editorial 著

陸上と洋上の風力発電所に、世界の風速・風向の平年値を重ねる。

風の平年値と風力設備。全球10mと日本100mの風況は直接比較できない。

Data Scapeでデータを探索する

大陸の上にも、沖合の海にも風は吹く。しかし、風の強い場所を塗りつぶしただけでは、風力発電所の地図にはならない。発電所の位置には、地形や風況だけでなく、送電網、港、土地や海の利用、そこで暮らす人々との関係が重なる。

IEAが2026年4月に公表したGlobal Energy Review 2026では、2025年の世界の風力設備の年間追加容量は約160GWとされた。前年比では約40%増えている。この規模の拡大がどこで起き、風の分布とどのように重なっているのか。その問いを、陸上と洋上を分けずに世界全体へ広げてみる。IEAの2025年推計

見えない空気と、地上の設備

風車の羽根には、飛行機の翼と同じように空気の流れによる力が働く。その力で回転を生み、発電機へ伝える。風は地表の起伏や植生、水域などの影響を受けるため、近い場所でも条件が変わる。米国エネルギー省の解説

今回の全球図で緑に描いたのは、NOAAが提供するNCEP–NCAR再解析の1991〜2020年の風速平年値だ。陸と海を含む、地表・海面から10mの風を使う。細い流線は平均風向に沿う。今日の天気や、特定の日に空気が移動した経路を再生しているわけではない。NOAA PSLのデータ

その上の円は、GEMの2026年2月版として取得した公開地図の事業フェーズである。稼働中19,403フェーズの出力容量を合計すると1,133.95GW。この数は風車の本数ではなく、一つの事業を段階的に整備するフェーズも別に記録される。風の面と設備の円は、異なるものを測っている。

強い風だけでは決まらない

稼働中と建設・計画中を切り替えると、現在のインフラと事業者の構想を分けて見られる。GEMは陸上・洋上の大規模事業を追跡し、設備の状態や容量、位置を整理している。ただし、計画の円がそのまま将来の発電量になるわけではない。GEMのトラッカー

風が吹いていても、電気を運ぶ経路が必要になる。DOEの立地解説では、現地の気象観測、送電線へのアクセス、環境と地域への影響を確認することが挙げられている。全球図の緑は、その検討の入口であって、建設に適した場所を判定した結果ではない。風力の立地と調査

IEAのRenewables 2025も、風力の拡大を左右する条件として許認可、送電網への接続待ち、資金や供給網の課題を扱っている。風そのものの地理に、電力を届ける仕組みの地理が加わる。海上に円が広がるときにも、海の上だけで完結する設備にはならない。Renewables 2025

風車の足元で見るもの

ニューヨーク州の風車の足元に立つ野外生物学者。高いタワーと人の大きさが対比されている。

米国ニューヨーク州の風車と、野外生物学者Apple Snider。撮影日は出典に記載なし。Paul Cryan / USGS、Public Domain。全球図の円を、現場の設備の大きさへ戻す写真。写真の出典

風車の周辺には、鳥やコウモリの移動、生息場所、地域の日々の利用がある。DOEが紹介する立地の検討では、建設前の野生生物調査と、運転後の影響の確認を組み合わせる。発電のために空気の動きを読むことと、その空間を使う生きものを調べることは、同じ現場で必要になる。DOEの鳥・コウモリに関する資料

日本の詳細図では、Global Wind Atlasの高度100mのモデルへ切り替える。全球の10mの風とは高度も期間も解像度も違うため、色だけで直接比較することはできない。細かい地形を含む風況モデルは、広い分布を眺める図から現地の条件へ近づく手がかりになる。Global Wind Atlasの手法

強い風の場所に、必ず風車があるわけではない。風が通る空間と、電気をつくり届ける場所の間にある距離を見つけること。その距離を埋める調査や設備、地域の判断まで想像すると、全球に散らばる円は違って見えてくる。

データと表現

設備は取得済みGEM Global Wind Power Tracker公開地図(2026年2月版として固定)、全35,089レコード。稼働中19,403フェーズ・1,133,953.6MWを再集計。主対象は10MW以上で、概略座標を含む。GEMの現行概要は32,227フェーズ・稼働1,129GWと表示され、取得地図と一致しない。本作は取得版を保持し、公式概要へ数値を合わせる補正はしていない。円の面積はMWに比例し、風車数や発電量を表さない。

全球の風はNOAA PSL / NCEP–NCAR Reanalysis 1、地上・海面上10m、1991〜2020年。月別平年値を日数で重み付けして年平均を作成。元格子は192×94、経度1.875度・ガウス緯度。色は日平均ベクトルから求めた風速の平年値、流線は年平均u/vから作った短い線。極域の欠測は延長せず、補間は見た目を滑らかにする処理に限る。流線の動きは平均的な向きの模式表現で、観測された空気塊の軌跡や速度ではない。

日本表示はGlobal Wind Atlas 4.0、2008〜2017年、100m高度、250m級モデル。両表示を直接比較したり、この図だけで個別地点の発電量・立地適性を判断したりしない。GEM:CC BY 4.0。全球風:NOAA PSL, Boulder, Colorado, USA。日本風:Global Wind Atlas / DTU・World Bank Group、CC BY 4.0。地理:Natural Earth、Public Domain。記事確認日:2026年10月10日。

出典

執筆者

SORAH Editorial

2026年10月10日

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