
地上に点在する発電所から、地下の熱を使う世界の現在地を見る。

アイスランド、ケニア、インドネシア。離れた国々の発電所を地球の上に置くと、地下の熱へ人がアクセスしてきた場所が浮かぶ。地熱は足元にある。しかし、その熱を安定して取り出し、電気として届けるまでには、井戸も、配管も、長い調査の時間も必要になる。
いま、その地図が変わる可能性に投資が集まっている。国際エネルギー機関(IEA)が2026年1月23日に公表した分析では、次世代地熱への資金調達は2025年に約22億米ドルに達した。掘削技術の進展と、継続して電気を必要とする需要家との契約が背景にある。これは投資の動向であり、新しい設備がすべて完成したことを意味しない。IEAの分析
熱を取り出す場所と、電気をつくる設備
今回取得したGlobal Energy Monitor(GEM)の2026年3月版公開地図には、稼働中の地熱発電設備が505基、出力容量の合計が16.63GW記録されている。1基は発電所全体とは限らず、同じ発電所に複数の設備が含まれる。円の面積に重ねたのは、この設備の容量だ。地下に眠る熱の総量でも、実際に一年間につくられた電力量でもない。稼働中の設備を建設・計画中の設備へ切り替えると、いま電気を届けている場所と、将来の供給を目指す場所を分けて見られる。地図は地熱資源だけでなく、調査、資金、土地利用、送電網、地域との調整を経てきたインフラの記録でもある。GEMのトラッカーと定義
どのような場所に可能性があるのか
地熱発電の適地を探すとき、従来型の開発で鍵になるのは、十分な熱、その熱を運ぶ水、岩盤の中を水が流れる通り道の三つだ。日本やインドネシアのような火山地帯は、地下のマグマが周囲の岩石を熱する場所として有望になる。雨などが地下へしみ込み、熱せられた水や蒸気が岩盤の隙間に蓄えられると、地熱貯留層ができる。JOGMEC:地熱発電のしくみ温泉や噴気は地下を知る手がかりになるが、地表に目立つ兆候がなくても、利用できる熱水が隠れていることがある。反対に、温泉があるだけで発電に十分な温度や流量が得られるとは限らない。地表の調査と試掘を重ね、どの深さに、どれほどの熱水があり、長く取り出せるのかを確かめる。米国エネルギー省:熱水資源
対象は火山の近くだけではない。深い堆積岩の地層にも熱を持つ水が存在し、発電への利用が研究されている。ただし、井戸を深くすれば掘削の負担も増える。地下の条件に加え、送電網への接続、開発費、周辺の水利用や地域との関係まで含めて、実際に利用できる場所が決まる。米国エネルギー省:地熱による発電、IEA:地熱の将来
発電方式は、取り出せる蒸気と熱水で変わる
フラッシュ発電は、高温・高圧の熱水が減圧されて生じる蒸気を取り出し、タービンを回す方式だ。蒸気を一度分離するシングルフラッシュと、残った熱水からさらに蒸気を取り出すダブルフラッシュがある。JOGMEC:蒸気発電バイナリー発電は、地下からの熱を、水より低い温度で沸騰する別の媒体へ渡し、その蒸気でタービンを回す。地熱流体と発電用の媒体を別の系統にすることで、フラッシュ方式より低温の熱水も利用しやすくなる。温泉などの熱を使う小規模な設備も、この方式に含まれる。JOGMEC:バイナリー発電
**蒸気直接利用(ドライスチーム発電)**は、地下から主に蒸気として取り出せる資源を使い、その蒸気をタービンへ送る。こうした蒸気に富む資源は限られる。図の凡例は、この三方式に「その他の方式」「方式不明」を加えて設備を分けている。米国エネルギー省:発電方式
地下資源の使い方にも種類がある
発電方式とは別に、地下から熱を取り出す方法にも違いがある。従来の熱水系は、自然に存在する熱水・蒸気と水の通り道を利用する。**EGS(地熱増産システム)**は、熱はあるものの水の流れが十分でない岩盤などで、割れ目の通りを改善し、水を循環させて熱を取り出す。クローズドループ方式は、地下に設けた閉じた管の中で流体を循環させ、周囲の岩盤から熱を受け取る。岩盤の割れ目を通して水を流すEGSとは、地下での仕組みが異なる。米国エネルギー省:次世代地熱こうした技術は、自然の熱水貯留層に恵まれた地域の外へ、地熱利用を広げようとしている。地下で熱を集める方法と、地上で電気へ変える方法は二つの分類軸だ。たとえばEGSで取り出した熱も、条件に応じて地上の発電設備に渡される。今回の図の色は地上の発電方式を示し、EGSなどの開発可能地域を表したものではない。
ケニアの井戸と、カリフォルニアの観測
ケニアのオルカリアは、ナイロビから約120km、ヘルズゲート国立公園の中にある。発電事業者KenGenの記録では、1960年代の井戸掘削と、その後の地質・物理探査を経て、1981年に最初の発電設備が稼働した。地下の割れ目を調べ、井戸を掘り、蒸気を分離して運ぶ。全球の一つの円には、こうした長い現地の仕事が重なっている。KenGenの地熱開発史米国カリフォルニア州のロングバレー・カルデラでは、カーサ・ディアブロの発電施設が地下の熱水を利用している。使った水を地下へ戻していても、水文環境に影響がないとは限らない。USGSはホットクリークで流量や水質を測り、周辺の変化を観測している。発電所の運転と、熱水を共有する環境の監視は、同じ場所で続く営みだ。USGSの現地解説

米国カリフォルニア州マンモスレイクス付近のガス調査。2021年11月頃。Jonathan Glen / USGS、Public Domain。発電量の測定写真ではなく、地熱地帯の環境を調べる現場の記録。写真の出典
地図を広げる前に、地下を知る
次世代地熱は、従来利用しにくかった深い場所や流体の通りにくい岩盤へ対象を広げようとしている。IEAの2024年報告は、石油・ガス分野で蓄積された掘削や地下評価の技術が役立つ一方、初期投資、許認可、環境と社会の条件への対応を課題に挙げた。The Future of Geothermal Energy発電所の円が増えるとき、その下には新たに調べられた岩盤があり、地上には電気を受け取る暮らしがある。地下の熱を使う場所は、井戸を掘った時点だけでは決まらない。長く運転し、周囲の水や土地を確かめ続ける仕事まで含めて、地熱の地図はつくられている。
データと表現
設備はGEM Global Geothermal Power Tracker、2026年3月版の取得済み公開地図を使用。取得した834レコードを母集団とし、稼働中505基・16,626.76MWを再集計した。GEM公式概要の835基とは1件の差があり、未解消のまま開示する。対象は主に1MW以上。休廃止・中止・棚上げは表示から除き、同一座標・方式・状態の設備は合算する。計画・建設中は実現が保証された将来予測ではない。円の面積はMWに比例し、色は発電方式を表す。名称は図内では省き、探索画面で選択して確認できる。地形の陰影はNOAA ETOPO 2022の標高・水深から作る固定背景で、地下温度や地熱資源量ではない。全球と日本表示は同一設備データを使う。設備データ:Global Energy Monitor、CC BY 4.0。地形:NOAA NCEI。自然地理:Natural Earth、Public Domain。記事確認日:2026年10月10日。
出典
執筆者
SORAH Editorial
2026年10月10日



