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レアアースはどこからくる?

公開日 08/October/2026 · Society

レアアースはどこからくる?

SORAH Editorial 著

スマートフォンを充電する。電車のモーターが回る。私たちが電気を使う時間の下には、はるか以前に地球がつくった岩石と、そこから材料を取り出す人々の仕事がある。モーターの磁石に使われるレアアースを入口に、電池を支えるリチウムやコバルトにも目を向ける。製品の中で異なる仕事を担う材料を、地球上の具体的な場所へ戻してみる。

リチウム(Li)とコバルト(Co)は、それぞれ一つの化学元素の名前だ。一方、レアアース(希土類元素)は、ネオジムなどのランタノイド15元素に、スカンジウムとイットリウムを加えた17元素の総称である。リチウムもコバルトも、レアアースには含まれない。 [1]

ここで一緒に扱う軸は、現代の機器を支える資源と、その供給をめぐる課題だ。「重要鉱物」も化学的な分類名ではない。たとえば米国では、経済・安全保障に不可欠で、供給が途絶えるリスクのある鉱物や材料を対象にする。同じ用途を持つ三つの元素としてではなく、電池やモーターへ至る異なる資源の経路として、地図を重ねている。 [2]

2026年版の国際エネルギー機関(IEA)の報告では、重要鉱物の供給集中と輸出管理が経済安全保障の課題として扱われている。2025年の中国によるレアアース輸出管理は、一部の自動車メーカーの操業に影響した。少量の材料が届かないことで、その先の大きな生産が止まる。その関係は、資源の埋蔵量だけでは読み解けない。 [3]

USGS MRDS 2016。銀=リチウム(元素)、青=コバルト(元素)、金=レアアース(元素群)の記録。

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USGS MRDS 2016。銀=リチウム(元素)、青=コバルト(元素)、金=レアアース(元素群)の記録。

電気を蓄える材料と、動きをつくる材料

リチウムイオン電池では、充放電の際にリチウムイオンが二つの電極の間を移動する。その移動と、外部の回路を流れる電子を組み合わせて、エネルギーを蓄えたり取り出したりする。電池は電気を入れる空の箱というより、物質の状態の変化を繰り返し利用する装置だ。私たちが残量として見ている数字にも、内部の物質の働きがある。 [4]

コバルトは一部の電池の正極材料に使われる。ただし、すべてのリチウムイオン電池がコバルトを必要とするわけではない。リン酸鉄リチウム(LFP)のように、異なる材料を選ぶ方式もある。電池の設計が変われば、求められる鉱物の組み合わせも変わる。未来の資源需要は、地下に何があるかと、地上で何をつくるかの両方で形づくられる。 [5]

レアアースの中でも、ネオジムは、小さくても強い磁石をつくり、電動モーターなどで使われる。リチウムやコバルトと一緒に語られることが多くても、製品の中で担う仕事は同じではない。電気を蓄えることと、電気から動きを取り出すこと。その異なる働きを支える材料が、一台の機器の中で出会っている。 [6]

地下の時間は、国境より長い

カリフォルニア州のモハーベ砂漠にあるマウンテンパス鉱山。階段状に削られた露天掘りの斜面は、地図では小さな一点になる。ここでレアアースを含む鉱石を生んだのは、約14億年前に地殻へ入り込んだマグマに関わる作用だ。炭酸塩鉱物を多く含むカーボナタイトという火成岩が、その地質を特徴づける。 [6]

米国カリフォルニア州マウンテンパスの露天掘り鉱山。T. Morton / USGS、Public Domain。公開日2022年3月29日、撮影日不明。 出典

米国カリフォルニア州マウンテンパスの露天掘り鉱山。T. Morton / USGS、Public Domain。公開日2022年3月29日、撮影日不明。 出典

鉱山は、現在の産業のために使われる場所であると同時に、地球の長い時間が露出した場所でもある。地図上の国境は材料の取引や管理を分けるが、鉱床を生んだ作用まで国ごとに分かれていたわけではない。国別の生産順位から地点の分布へ視線を移すと、政治の地図の下にある、もう一つの地理が見えてくる。

リチウムの場合には、硬い岩石だけでなく、塩分の濃い地下の水にも資源がある。USGSがまとめた研究は、主な鉱床としてペグマタイト、陸域のかん水、熱水によって変質した粘土を挙げる。かん水型の成立には、乾燥した気候、外へ流れ出さない盆地、リチウムの供給源、濃縮するための時間などが関わる。チリのアタカマ塩原や米国ネバダ州のクレイトン・バレーは、その仕組みを考える具体的な土地だ。 [7]

同じ元素を得る場合でも、岩石を扱う場所と、地下のかん水を扱う場所では、確かめるべき地質や水の動きが違う。地球上の資源を一つの数にまとめると見えにくくなる条件が、地点へ近づくことで戻ってくる。材料の名前が共通でも、その材料を取り出す土地まで同じにはならない。

光る点は、発見から採掘までの途中にある

この地球には、USGSの鉱物資源データベースMRDSから、リチウム508件、コバルト1,520件、レアアース(REE区分)1,277件の資源区分別記録を重ねた。銀と青は個別の元素、金は元素群として記録された地点を示す。同じ場所に複数の資源が記録されることもあり、件数は鉱山の実数や、元素どうしの供給規模の順位にはならない。 [8]

明るい点から淡い点まで、生産鉱山、過去の生産鉱山、探査済み鉱床、鉱徴・産出記録という、記録時点の段階がある。すでに掘られた土地と、調査によって存在が知られた土地が、一枚の地図の中に重なる。地質の兆候を見つけること、利用できる量や品質を確かめること、実際に生産すること。その間には、人が判断し、働く時間がある。 [8]

同じ地点を白い標高等高線とともに。MRDS / NOAA ETOPO 2022。

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同じ地点を白い標高等高線とともに。MRDS / NOAA ETOPO 2022。

鉱山の場所と、供給できる場所は違う

鉱石を取り出しても、そのまま電池や磁石に組み込めるわけではない。使うためには、必要な成分を分け、製品に合う品質へ整える工程がある。IEAの2026年報告は、供給源を分散する計画でも、採掘に比べて精製や川下の製造能力が遅れていると指摘する。地図に点が増えることと、材料を届ける経路が増えることは、同じ速度では進まない。 [3]

その違いは、資源を持つ土地と、材料を使う人々の間にある仕事を考える入口になる。必要なのは鉱石だけではない。工程を動かす人の知識、設備、輸送、継続して取引する相手も必要になる。消費する側からは一つの材料に見えるものが、実際には複数の場所と仕事によって支えられている。

掘る人々まで、材料をたどる

供給を語るとき、働く人の条件も欠かせない。米国労働省の2024年の報告は、コンゴ民主共和国で、子どもがコバルト鉱石や銅鉱石の採掘に伴う危険な仕事に従事していることを記録している。これは同国のすべての鉱山を一括りにする説明ではなく、材料の調達に際して確かめるべき、具体的な労働の問題だ。 [9]

遠くの土地で起こることは、製品の表面からは見えにくい。だからこそ、産地を知るだけでなく、どの現場を経て、どんな条件で材料が渡ってきたかをたどる必要がある。効率よく材料を集めるという問いと、そこで働く人の生活を支えるという問いは、同じ供給の経路に重なっている。

使い終えた製品にも、次の材料がある

採掘された材料は、使い終えた後にも地上に残る。IEAのリサイクルに関する報告は、使用済み製品から材料を回収する仕組みを、供給の安全性を高める手段として位置づける。ただし、回収設備を建てるだけで製品が集まるわけではない。収集、分別、再生材を使う需要までがつながって、初めて次の材料になる。 [10]

鉱床の場所は地球の歴史に強く制約されるが、製品を長く使い、回収し、材料として戻す仕組みは、社会の選択によって変えられる。地図の点を「未来の供給がすべて決まっている場所」と見る必要はない。地下から取り出す経路に、すでに使っているものから取り戻す経路を重ねることで、資源との関わり方にも別の余地が生まれる。

一周する地球を、手元の道具へ戻す

銀、青、金の点が、一つの地球の上を回っていく。その下には、かつてのマグマが残した岩石、乾いた盆地に濃縮されたかん水、調査と採掘の記録がある。その先には、工場で材料を整える人、機器を設計する人、充電して使う私たちがいる。

重要鉱物の地図は、どこからより多く取り出せるかを探すためだけのものではない。何をつくるために、どの土地と人に支えられているのかを見直す地図にもなる。手元の小さな電池とモーターを、地球の長い時間と、そこで働く人々の時間へつなぎ直してみたい。

データと表現

公式mrds-csv.zip(同梱メタデータ版20160315)の304,632件からLithium、Cobalt、REEを抽出。処理施設と分類不明を除き、表示対象はリチウム508件、コバルト1,520件、レアアース(REE区分)1,277件。原資料は保持し、表示条件で除外しています。

資源区分は原資料のLithium・Cobalt・REEに従います。REEは集合区分で、17元素を個別に抽出して足し合わせたものではありません。金色の点から個々の希土類元素の有無や含有量を判定することはできず、17元素すべてが各地点で確認されたことも意味しません。

Producerは記録入力時に生産していた鉱山、Past Producerは当時すでに生産を終えた鉱山。Prospectは探査が進んだ鉱床、Occurrenceは規模等が十分にわかっていない鉱徴・産出記録。最大不透明度はこの順に100%・65%・38%・18%。この階調は分類で、生産量や資源量ではありません。系統的更新は2011年に終了しています。

1記号=1記録。異なる記録が同じ鉱山を指す場合があるため、件数を鉱山の実数とは呼びません。副産物の鉱種も含み、記号の大きさを生産量へ対応させません。国別の2025年生産量は地点へ割り振りません。

米国内の記録が充実し、他地域は不完全です。点の密度は資源の豊富さや未発見資源を表しません。WGS84、位置精度は原記録ごとに異なります。

陸地の塗りなし。国境はNatural Earthの文脈用境界。等高線はETOPO 2022の1024×512標高格子から500、1000、2000、3000、4000、5000、6000mを抽出。現況の鉱山や地形変化を示す図ではありません。

点滅は記録時点の生産鉱山(Producer)を示します。2秒周期で不透明度を25〜100%に変え、その他の分類は一定。現在の稼働や生産量の変化を表すものではありません。

生産鉱山の点は、他の分類の2倍の直径で表示。大きさは分類の識別用で、生産量・資源量を示すものではありません。

出典

  1. USGS · Rare Earths Statistics and Information
  2. USGS · What is a critical mineral?
  3. IEA · Global Critical Minerals Outlook 2026
  4. US DOE · DOE Explains… Batteries
  5. US DOE · Technology Strategy Assessment: Lithium-ion (2023)
  6. USGS · Mountain Pass REE mineralization
  7. Munk et al. · Lithium brines: A global perspective (2016)
  8. USGS · Mineral Resources Data System / metadata
  9. US Department of Labor · 2024 Findings on the Worst Forms of Child Labor
  10. IEA · Recycling of Critical Minerals (2024)

執筆者

SORAH Editorial

2026年10月8日

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