SORAH
|
Article
観測史上最も暑かった夏。しかし、その暑さには偏りがあった。

公開日 23/September/2026 · Climate

観測史上最も暑かった夏。しかし、 その暑さには偏りがあった。

SORAH Editorial 著

観測史上最も暑い夏だった。しかし、その暑さには偏りがあった。世界平均というひとつの数字から地球の上へ視線を戻す。

2026年6〜8月、世界平均はNASAの観測記録で最高となった。地球図の濃淡をたどり、その数字に収まらない地域差を読む。

観測史上最も暑い夏だった。2026年6〜8月の世界平均気温は、NASAの1880年以降の記録で最高となった。しかし、その暑さには偏りがあった。ユーラシア北部に広がる濃い赤。太平洋に続く淡い赤。同じ3か月を描いた地球図にも、場所ごとの違いが見える。[1][2]

ニュースで聞く「世界平均」は、この濃淡をひとつの数値にまとめたものだ。その数字から地球の上へ視線を戻すと、記録の更新とは別の問いが現れる。どこが、いつもの気候から大きく離れたのか。そして、そこで人はどんな夏を過ごしたのか。

2026年6〜8月の平均気温偏差。赤はその場所の1951〜1980年平均より高く、青は低いことを示す。色は絶対気温ではない。NASA GISTEMP v4の格子データからSORAHが描画。[5][6]

2026年6〜8月の平均気温偏差。赤はその場所の1951〜1980年平均より高く、青は低いことを示す。色は絶対気温ではない。NASA GISTEMP v4の格子データからSORAHが描画。[5][6]

+1.28°Cが示す夏

NASAの公表値では、2026年6〜8月の世界平均は1951〜1980年の同じ季節より1.28°C高かった。これまで最も高かった2024年の1.25°Cを、公表値で0.03°C上回る。1880年から2026年まで、147年の6〜8月を同じ条件で比べた結果だ。[2]

ここでいう「夏」は北半球の季節を指す。平均の対象には、冬を迎えていた南半球も含まれる。陸上の地表付近の気温と海面水温を組み合わせ、地球全体の状態を捉えている。すべての国が最も暑い夏を経験した、という意味ではない。[1]

0.03°Cという差だけで、温暖化が急加速したとは言えない。観測網には空白があり、解析にも不確実性がある。「最高」はNASAが公表するこの系列の順位として読む必要がある。また、この1.28°Cは1951〜1980年を基準にした値で、産業革命前を基準にするパリ協定の1.5°Cとは、そのまま比較できない。[1][3]

赤の濃さは、何を示しているのか

地球図では、ふだん寒い場所も濃い赤になる。その土地の平均からの変化が大きければ、絶対気温が熱帯より低くても赤は深くなる。涼しく見える青も、寒波や人にとっての快適さを直接表してはいない。まず見るべきなのは、その場所が基準期間からどれだけ離れたかだ。[5]

図の濃淡を確かめるため、同じ格子データから2つの範囲を集計した。ユーラシア北部の一角では約+2.7°C、赤道付近の西太平洋では約+0.7°Cだった。いずれも1951〜1980年の同じ季節との比較である。行政区分や地域全体の代表値ではなく、緯度・経度で切り出した範囲の面積加重平均だ。範囲は末尾に記した。[6]

両方とも基準より暖かい。それでも、上昇幅は同じではない。世界平均が最高だった夏にも、暑さには偏りがあった。南北アメリカ側の図へ回ると、さらに別の濃淡が現れる。2枚を同じ色の尺度で見ることで、ひとつの国からは見渡せない分布を比べられる。

同じ2026年6〜8月を南北アメリカ側から見る。期間、基準、色の尺度は前の図と共通。2枚の違いは視点の違いであり、時間の変化ではない。[5][6]

同じ2026年6〜8月を南北アメリカ側から見る。期間、基準、色の尺度は前の図と共通。2枚の違いは視点の違いであり、時間の変化ではない。[5][6]

暑さに偏りが生まれる理由

地球の表面は、同じ速さで温まるわけではない。長期的には陸と海、低緯度と高緯度で温まり方が異なる。その上に、海面水温や風の流れが月ごと、季節ごとに変わる。温暖化という長い時間の変化と、その夏の大気や海の動きが、同じ地球図に重なっている。[8][9]

2026年の日本については、気象庁が具体的な背景を分析している。西日本では、偏西風の蛇行に伴って暖かい高気圧に覆われ、下降気流などが高温・少雨に寄与した。地球温暖化による大気全体の昇温も重なっていたという。[11]

エルニーニョも、この夏の海と大気を考える重要な要素だ。ただし気象庁は、ユーラシアの偏西風に、過去のエルニーニョ時の傾向とは異なる特徴も見いだしている。「エルニーニョの年だから」で、地図のすべての赤を説明することはできない。ここで紹介した日本の分析を、ユーラシア北部や世界全体の原因へ広げることもできない。[11]

同じ上昇幅でも、暮らしへの影響は違う

世界の最高記録と、地域の夏は一致しない。気象庁によれば、日本の2026年6〜8月平均は1991〜2020年比で+1.02°C、1898年以降で5番目に高かった。NASAの世界平均とは対象も基準期間も異なるため、温度差の大小を直接比べることはできない。それでも「世界で最高」と「日本で最高」が別の記録であることはわかる。[12]

人が受ける暑さの負担には、さらに別の条件が加わる。湿度、夜の気温、屋外で働く時間、住まい、冷房を使える環境。WHOは、熱への弱さが健康状態だけでなく、職業や社会経済的な条件にも左右されると説明している。[10]

そのため、気温偏差の地図から被害の順位を作ることはできない。色が淡い地域にも厳しい暑さはありうる。季節平均には表れにくい数日間の熱波や暑い夜も、暮らしを左右する。地球図から地域へ近づくときには、日ごとの観測や、そこで暮らす人の条件を合わせて見る必要がある。

世界平均から、ひとつの場所へ

世界平均は、地球全体がどこへ向かっているかを知るために欠かせない。一方で、その夏に何が起きたかを知るには、平均をほどき、場所と時間へ戻る必要がある。

この地球図に描かれているのは、同じ3か月を過ごした地球の、異なる変化だ。濃い赤の場所では、どんな風が吹いていたのか。淡い赤の街では、夜に気温が下がったのか。「観測史上最も暑かった夏」という一文の先に、確かめるべき夏がいくつもある。

データについて

対象は2026年6〜8月。世界平均と順位はNASA GISTEMP v4の公表JJA列を使用し、2026年9月23日にCSVが前回取得分と同一であることを確認。地図は2°格子・1200 km解析平滑化済みの6・7・8月偏差を等重みで平均し、3か月とも有効な格子を表示。表示上の補間を含む。地域比較はユーラシア北部(50–70°N、60–120°E)と赤道付近の西太平洋(10°S–10°N、130–170°E)を緯度の余弦で面積加重したSORAHの計算。格子中心が下限以上・上限未満のものを採用し、陸海マスクは使わない。有効格子はそれぞれ300/300、200/200。結果は+2.736°C、+0.712°Cを小数1桁に丸めた。地域境界の選び方で値は変わる。地図は健康被害や原因の分布を示さない。動画は同じ6〜8月平均のデータに固定し、24秒で地球儀を1回転させる。日付・世界平均値・色尺度・倍率は固定し、変化するのは視点のみ。時間方向の補間や月次データへの切り替えは行わない。

出典

  1. NASA GISS — GISTEMP v4
  2. GISTEMP 月次CSV
  3. Lenssen et al. (2024) — observational uncertainty
  4. Notion — 2026年は観測史上最も暑い年になるか
  5. NASA GISTEMP — 2°格子データ / 1200 km解析平滑化
  6. NASA GISTEMP 格子データ NetCDF
  7. Natural Earth — 1:50m land / coastline
  8. NOAA — Global warming FAQ(一般的な仕組み・アーカイブ)
  9. NOAA — El Niño / La Niña FAQ(一般的な仕組み・アーカイブ)
  10. WHO — Heat and health
  11. 気象庁 — 令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会(2026-09-01)
  12. JMA / TCC — Seasonal Highlights, June–August 2026(2026-09-23取得)

執筆者

SORAH Editorial

2026年9月23日

関連プロダクト

CLIMATE STRIPES | 世界平均気温の推移

ポスター

CLIMATE STRIPES | 世界平均気温の推移

英国レディング大学のエド・ホーキンス教授が発案した「気候ストライプ」(Warming Stripes, Climate Stripes)を1枚のポスターに凝縮しました。

Data Source:Ed Hawkins, National Centre for Atmospheric Science, University of Reading

製品を見る

関連記事

Newsletter

SORAHからのお知らせをお届けします。